レーシック近視手術の関係者が語る
第1話.「あっ、痛い!」と小さく声を上げて、患者さんは顔をそむけた。
「ちっ」と舌打ちする若いドクター。
患者さんはレーシック手術でフラップを作るとき、痛みを感じてとっさに顔を動かした。そのため、左右に振動するマイクロケラトームのブレードによって、フラップが途中から切れてしまったようだ。
フラップを作成する場合は点眼の麻酔剤を用いるので痛みがないのが普通である。しかし、眼球を固定する器具や瞼を開けた状態を保つ器具が眼のどこかに当たって刺激を与える事もあるし、マイクロケラトームの作動音に驚いた患者さんは顔を動かそうとすることはある。しかし、眼は吸引機でしっかり固定されているので、少しのことでは動かない。作動音も事前に聞かせておけば驚くこともないはずである。
フラップを作るには、眼球をかなり強い圧力で吸い上げ、金属の吸引リングで角膜を固定し、その状態でマイクロケラトームの金属の部分を差し込んで固定する。マイクロケラトームはカンナの構造をしており、金属の板が角膜を圧迫しながら進み、その中に組み込まれたブレードがモーターの駆動によって高速で左右に振動することで角膜の一部から薄いフラップを切り出すことができるように作られている。問題は、まず吸引がしっかりできているかどうかだ。一般に、日本人の眼球は欧米人に比べて小さく、目じりが狭いことが多い。そのため、欧米人用に作られた固定リングは大きい場合がある。大きな固定リングは結膜にはまりにくく、吸引がうまく行われない場合場ある。マイクロケラトームを扱うときの要領として次の点が重要である。
吸引リングで角膜を固定した状態で、執刀医はマイクロケラトームを押し付けては駄目で、少し上に持ち上げ、吸引が外れていないかどうかを確認しながらブレードを動かさなければならない。途中で吸引が外れた場合は、慌てずにすぐにブレードのフットスイッチを切って、ゆっくりマイクロケラトームをはずせばよい。そして、1週間以上たってから、同じブレードを用いて、しっかり吸引を確認して、いつものようにマイクロケラトームを動かせば、前回、途中までできているフラップの続きの位置からきれいにフラップが出来上がる。
しかし、緊張している未熟な執刀医はマイクロケラトームが外れるのが怖くて、逆に角膜を固定している吸引リングを押し付けながらブレードを動かしてしまうことがある。吸引リングを押し付けた場合は、吸引が外れていてもわからないままで、ブレードが進むので、患者さんが少し顔や眼を動かしたりすると、フラップが途中で切れたり、ズレた小さなフラップしか作られない。たとえ吸引が落ちたまま、フラップが作られたとしても、フラップをつないでいるヒンジの部分は大きく、角膜の中央付近にできるため、その後のエキシマレーザーを照射できないばかりか、フラップをそのまま戻したとしても、必ず乱視が発生する。
こうした場合は、手術を続けることはできないし、その後もレーシックを受けることはできない眼になってしまう。
未熟で不注意な執刀医が行ったフラップ作成は、悲惨な結果を招いてしまうのだ。
こうした悲惨なことが起こるかも知れないと考えると、不器用な眼科医がマイクロケラトームを作動させるたびに、今でも顔を背けたくなってしまう。
- Copyright (C) 2009 Lasik-kowai. All Rights Reserved.
